[メイン2] アルリウネ :  

[メイン2] アルリウネ :  

[メイン2] アルリウネ :  

[メイン2] アルリウネ : アルリウネ、人間になることを切望した人形。

[メイン2] アルリウネ : 彼女は魂のこもった目で人々に愛されていた。

[メイン2] アルリウネ : アルリウネ、暗い森に捨てられた。

[メイン2] アルリウネ : カラスは輝く目を盗んだ。彼女の精神、生命、心はゆっくりと消えていった。

[メイン2] アルリウネ : アルリウネ、目もなしにすべてを見る。人形になることを切望した人間。

[メイン2] アルリウネ : 彼女は土に帰りたいと思い、生を望むすべてとともに土に帰る。

[メイン2] アルリウネ :  

[メイン2] : 「緊急速報です!緊急速報です!──町の一部が突如花に覆われ、観測が出来ない状態となっております!」

[メイン2] : 「花による害はいまだ判明しておりませんが、住民の方々はくれぐれも近づかないようにお願いします!繰り返します────」

[メイン2] :  

[メイン2] アルリウネ : 土から生まれたのなら、土に還るのもまた道理。

[メイン2] アルリウネ : 春が終わり、冬を迎えて。
花と共に枯れ落ちるだけ、その筈だった。

[メイン2] アルリウネ : けれど人形はそこに立つ。

[メイン2] アルリウネ : 形はより人らしく、しかしてその瞳に映るのは虚ろ。

[メイン2] アルリウネ : 「ああ……」

[メイン2] アルリウネ : 「春が来たのね」

[メイン2] アルリウネ : 私が咲いている理由も、枯れていない理由もわからない。

[メイン2] アルリウネ : ただ、一つ衝動のように搔き立てる欲求があった。

[メイン2] アルリウネ : 「それならば、命をもっと多く咲かせてみましょう」

[メイン2] アルリウネ : 「そうして、満開になった時には」

[メイン2] アルリウネ :      英知 
「そこには魂が残っているのでしょうから」

[メイン2] アルリウネ : そうして、人形の周囲には

[メイン2] アルリウネ : 色濃く残る、花の残香が染みついていた。

[メイン2] アルリウネ :  

[メイン2] アルリウネ : そうして英知を手に入れられたのなら、私は。

[メイン2] アルリウネ : ようやく、”人”に成れる。

[メイン2] アルリウネ : 幻想のような体ではなく、人として咲き、枯れる事が出来るから。

[メイン2] アルリウネ : 故に、望む。

[メイン2] アルリウネ :  

[メイン2] アルリウネ :  

[メイン2] アルリウネ :  

[メイン2]   : 『アルリウネの収容違反に注意しろ。この状況が別の災害につながる可能性があることはわかっている。』

[メイン2]   :  

[メイン2]   :  

[メイン2]   :  

[メイン2] キャロル :  

[メイン2] キャロル :  

[メイン2] キャロル : ────ある世界にて、《魔法少女事変》と呼ばれる世界を懸けた決戦を巻き起こした首謀者

[メイン2] キャロル : あらゆる世界のものを分解、理解しようとする錬金術の秘奥
『万象黙示録』

[メイン2] キャロル : それの成就の為に…戦い、敗れ──

[メイン2] キャロル : 次の記憶は、再び世界の明暗を懸けた戦い
だけど…それが少し違うのは自分も守る側だった事だったのだが…

[メイン2] キャロル : 『───ああ、ありがとうな』

[メイン2] キャロル : 役目を終えた錬金術師は、その記憶を閉じて

[メイン2] キャロル :  

[メイン2] キャロル :  

[メイン2] キャロル : 次に目が覚めた
いや…目が覚めたと言う表現すら適切かは不明だが…

[メイン2] キャロル : とにかく、自分は目を開けて活動していた
…全く知らない概念が跋扈する世界にて

[メイン2] キャロル : だが───

[メイン2] キャロル : 『肝心の体験が無い』

[メイン2] キャロル : 記憶があれども、それが自分のものと一致しない不愉快な感覚

[メイン2] キャロル : 断片的な事は…まだ…そう
"世界を滅ぼす歌"や"復讐"とかは…あるが

[メイン2] キャロル : これが…自分の事だとは思えない
どうしても他人のようにしか感じない

[メイン2] キャロル : 何故、ここまでの力を付けたのかも
記憶こそあれども…合致がしない
何もかも

[メイン2] キャロル : だから……探しに行こう
自分の体験を

[メイン2] キャロル : 取り戻しに行こう
自分の体験を

[メイン2] キャロル : 『想い出』を使ってでも、為さねばならないことがある

[メイン2] キャロル : もしも、オレの前に何かが立ちはだかるのだとしたら

[メイン2] キャロル :  

[メイン2] キャロル : その全てを滅し、己の糧と変えてやろう

[メイン2] キャロル :  

[メイン2] キャロル : 虚でありつつも意志は確実に灯った瞳を有して

[メイン2] キャロル : 街へと、少しずつ進んで行った

[メイン2] キャロル : ───自身の

[メイン2] キャロル : 『理解』

[メイン2] キャロル : 自他世界に対する

[メイン2] キャロル : 『分解』

[メイン2] キャロル : そして……

[メイン2] キャロル :  

[メイン2] キャロル :  

[メイン2] キャロル : オレ自身の『再構築』を

[メイン2] キャロル :  

[メイン2] キャロル :  

[メイン2] キャロル :  

[メイン2] : そこは、綺麗な花園だった。

[メイン2] : 桃色の花々で彩られ。

[メイン2] : そうして花びらも咲き乱れる、まさに幻想といったような風貌。

[メイン2] : もっとも、むせかえるような花の香りと。

[メイン2] : 満月の光に照らされ、妖艶な雰囲気を出している事を除けば、だが。

[メイン2] :  

[メイン2] :  

[メイン2] アルリウネ : 「ああ、よく咲き乱れていますね」

[メイン2] アルリウネ : その花園の中に一つ、人形が花びらを見てそう呟く。

[メイン2] アルリウネ : 「きっとこれだけの花、枯れるのもすぐでしょうに────あら?」

[メイン2] アルリウネ : 人形は、感じた。

[メイン2] アルリウネ : ”何か”がその花園へと入ってくること、それに。

[メイン2] アルリウネ : 「あ、こんにちは~?」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…あらぁ?」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「ふふ…こんばんは」
にこり、優しげに笑う女性は

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 金色の膜の中、アルリウネを見つめている

[メイン2] アルリウネ : 「……?ああ、こんばんわでしたね!ごめんなさい、あまり慣れていなくって…!」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「構わないんですよ、ええ」

[メイン2] アルリウネ : その瞳に、虚ろな眼窩で見返す。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…貴女も、産まれ直しに来たのね?」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : そんな虚ろな視線にも、反応はなく

[メイン2] アルリウネ : 「……生まれ直し、ですか?それは…枯れ落ちる事、でしょうか」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「大丈夫…わからなくても、わかっていても…」

[メイン2] アルリウネ : 聞いたことのない、だけれど自らのなすべき事と照らし合わせて。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「しっかり、産み直してあげるもの」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 微笑みのまま、琥珀の卵を抱くと

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 花に埋もれた命が、光の柱に包まれて浮かび上がる

[メイン2] アルリウネ : 「あら……」

[メイン2] アルリウネ : その柱に、目を奪われて。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : その命は、光の中で

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 無垢に、純粋に

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 再構築されて"生まれ変わる"

[メイン2] アルリウネ : 「どうして、花として咲いた命を……枯れ落とさないのですか?それが、命の在り方でしょう?」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…命あるなら、産まれる権利があるのですよ」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「ああ、愛し子…可愛らしい子」

[メイン2] アルリウネ : そう、命。
花に埋もれていた、”人”の命は、これから枯れ落ちて終わるべきだ、と考えていたアルリウネ。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 光の中で、産まれ直したそれらは

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : そのまま、母を讃えるように歌を始める

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 黄金の光、揺り籠

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 金色の満月の中、ゆかりは笑う

[メイン2] アルリウネ : 土に落ちろ、土へ還れ

[メイン2] アルリウネ : そう呟く花びらたちは、その讃美歌に塗りつぶされる。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「さぁ…」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「怖がらないで、お嬢さん」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「貴女も、産んであげますとも」

[メイン2] アルリウネ : まるで、アルリウネを否定するように。
ただ、消えていく。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 命が巡る、光が伸びる

[メイン2] アルリウネ : その状況に、アルリウネは。
微笑み返す、眼窩のない眼で、ただ見つめて。

[メイン2] アルリウネ : 「いえ、いえ」

[メイン2] アルリウネ : 「土から生まれたのなら、土へと還るべき────」

[メイン2] アルリウネ : 「────あなたもそうでしょう?」

[メイン2] アルリウネ : 瞬間、アルリウネの背後に3つの花びらが咲き。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「うふ、うふふふ…」

[メイン2] アルリウネ : 散る、と思えば

[メイン2] アルリウネ : リン、と鈴のような音共に
光が花へと”還っていく”。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…あら」

[メイン2] アルリウネ : ふわり、と変わった花たちが舞い。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 命の光は、連ならず

[メイン2] アルリウネ : 「命が産まれ直すというのは……人の考え、でしょうか?」
リン、また鈴の音が鳴る。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「いえ」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「命は、巡るでしょう?」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「褪せていても、亜種であれど」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「全て、そこに隔たりはありませんもの」

[メイン2] アルリウネ : 「ええ、そうですね…命はどんな形であっても、命ですから」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「うふふ…ええ」

[メイン2] アルリウネ : 「ですが、命がいくつ生を望もうとも……」

[メイン2] アルリウネ : 「いつかは枯れ落ちて、土に還る事が……命の在り方、とも思うのですよ」

[メイン2] アルリウネ : 花が開き、鈴の音が鳴る。

[メイン2] アルリウネ : そんな、幻想的な現象にゆかりが呑み込まれるように────

[メイン2] アルリウネ : ────片腕が、花へと”還っていく”。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…あら」

[メイン2] アルリウネ : 「ふふ、そう、このように」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 卵を守るように、片腕が花びらへ

[メイン2] アルリウネ : アルリウネは、魂求める空っぽの人形。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…うふふ、在り方ですか」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「そんな"律"は、久しく…」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「聞いていませんから…」
虚ろなままに、卵を抱えて

[メイン2] アルリウネ : ゆえに、そこに魂あれば。
そこに命があれば。
求めるように、奪うように、花へと帰す。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「ですから…」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「花も人も、やはり」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…産まれてくださいな、ええ」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 笑みを見せると、光が溢れる

[メイン2] アルリウネ : 「……あら…?」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : それは、アルリウネではなく

[メイン2] アルリウネ : ふふふ、笑っていた一面が……止まる。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 辺り一面の花園を包み

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : ただ、産まれかえった者たちが目覚める

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 歩き方も知らぬ、声も知らぬ

[メイン2] アルリウネ : ゆかりの体が、花へと変わっていかなかったこと、そして……

[メイン2] アルリウネ : 花園が、消えていくことに。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : しかしそれらは刻まれていいる

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 産声の代わりに、唄を

[メイン2] アルリウネ : 「あら、あら……な、っ…これ、は……」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 呼吸の代わりに、魔法を

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「怖がらないで、痛くないのよ」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : ふうと

[メイン2] アルリウネ : 「なに、をっ……するのです……か……」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 産まれた者たちが息を吹けば

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 炎が吹き上がり、辺りを照らす

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「大丈夫…大丈夫」

[メイン2] アルリウネ : あとは枯れ落ちるだけの存在、そうだったのに。
満月の光が差して、そんな想いは消えてゆく。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : そうして、炎の渦の中

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : しかし、失った腕の傷は

[メイン2] アルリウネ : 「……っ、これ……はっ……ひ、なぁっ……」
炎、それは花人形である恐怖の象徴。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 彼女が気にしなくとも、傷は大きい故に

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 金の揺り籠が割れて、消えた花園に落ちる

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…あら…怖かったかしら」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : しかし、優しく声を掛けて

[メイン2] アルリウネ : 「っ……こんなもの、枯れる前に炭に帰す、恐ろしいものだわ……」

[メイン2] アルリウネ : 声も一定、目も虚ろ。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「なら…」

[メイン2] アルリウネ : しかして、そこには確かにおびえる人形が。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 手をかざせば、ほかの仔も手を挙げて

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 紫電が走り

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 重力に反して大地を、そのまま持ち上げる

[メイン2] アルリウネ : 「………」

[メイン2] アルリウネ : その有様に、ただ持ち上げられて。
ふわり、体が浮くが。

[メイン2] アルリウネ : 「……あなたは、人……では、ないのですね?人形とも、また…違うような香り」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…?」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…私は、人よ?」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「この子が、違うのよ…うふふ」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 琥珀の卵を抱き、見せて

[メイン2] アルリウネ : 「……その、命」

[メイン2] アルリウネ : 「では、果たして…なに、なのですか?」

[メイン2] アルリウネ : アルリウネは求めている。
魂のありかを、どうやって人に成れるかを。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…さあ、この子は…」

[メイン2] アルリウネ : 人形とはそうあるべきだから。
だというのに、あの卵は……それとも、また違う香り。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「デミゴッド、ですもの…私にはわからないわ」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 愛しそうに、撫でながら

[メイン2] アルリウネ : 「私にも、そんな……香りは、嗅いだことなんて、ありませんわ」

[メイン2] アルリウネ : 花園があったころも香っていた、その異質な香り。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「知らなくても大丈夫…ふふ」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「貴方には貴方の香りがあるでしょう?」

[メイン2] アルリウネ : 「あなたも、それに見惚れてしまったのですね」

[メイン2] アルリウネ : 「……どう、なのでしょう」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…愛し子ですもの」

[メイン2] アルリウネ : 手をゆっくりと、胸に当て。

[メイン2] アルリウネ : 「人形に、香りなんてものがあるのか、教えてくれる人もいませんでしたから、ええ」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「大丈夫よ…だって…」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…」
微かに、瞳が揺れて

[メイン2] アルリウネ : 「……はい」
ゆれる瞳を、空いた眼で見つめ。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「私の娘も…お人形になったもの」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : …微かに、記憶が揺れる

[メイン2] アルリウネ : 「……あら」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 目の前の少女に重なる、一人の少女

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…あら?」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「どうして…こんなところにいるのかしら」

[メイン2] アルリウネ : 「……え?」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…ここは…あら」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「どうもこんばんは、お人形さん」

[メイン2] アルリウネ : 「あら、あら……?」
様子が変わったような彼女に、戸惑いつつも。

[メイン2] アルリウネ : 口に手を当て。

[メイン2] アルリウネ : 「ええ、こんばんわ……」

[メイン2] アルリウネ : 「あなたは、誰でしょう?」

[メイン2] アルリウネ : 月の光が二人へと差し込まれつつ。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…私はゆかり、魔術を修めているのよ」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「不思議ね、学院から出た記憶はないのに…」

[メイン2] アルリウネ : 「あら……」

[メイン2] アルリウネ : アルリウネは、疑問に思う。
目の前の”人”の香りが変わった事に。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…怪我もしてる、いけないわ」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 欠けた片腕を、撫でれば

[メイン2] アルリウネ : 「ご挨拶ありがとう、私はアルリウネよ」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 青白い光が、代わりに腕に

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「アルリウネ、成程」

[メイン2] アルリウネ : 「あら、あら……」

[メイン2] アルリウネ : その治っていく有様を見届けて。

[メイン2] アルリウネ : 「匂いは変わっても、結局枯れ落ちないのね?」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…そういうものよ」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「貴方は…」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「産まれたいのかしら?」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 今度は、理性を微かに讃えた笑みで

[メイン2] アルリウネ : 「……そう、ね」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「でもね、ごめんなさい」

[メイン2] アルリウネ : アルリウネは想う。
人は、人形は枯れ落ちるべきで、それ以上はないものだと。

[メイン2] アルリウネ : けれど、けれど。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「噂を聞いたのなら、申し訳ないけど」

[メイン2] アルリウネ : 「人としてならば、そうかもしれないわ……あら」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…この子はね、まだ完全じゃないの」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「産まれ直しても"完全"になれない」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「何かが足りないから…私にはまだわからないけど」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「だから、産んでも…すぐに朽ちてしまうわ」

[メイン2] アルリウネ : 「命としては……きっと、朽ちるべきなのでしょうけど」

[メイン2] アルリウネ : ちらり、顔を向け。

[メイン2] アルリウネ : 「足りなければ、完全な”人”にもなれないのね?」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…ええ、何にもなり切れない」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「研究しているのだけど…まだね」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「だから、貴女も…」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「待たせてしまうわ、産まれるその日は…」

[メイン2] アルリウネ : 「……ええ、それならば……」

[メイン2] アルリウネ : 「……その見つける事……私にも、出来やしないのかしら」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…あら」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「ふふ…助かるわ、寧ろ」

[メイン2] アルリウネ : アルリウネは、求める。
人となるためなのであれば、どんな物でも、穴に埋めて見せる。

[メイン2] アルリウネ : 「……あら、そうなのね……?人形ですら、出来る事なのかしら」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「だって、これは魔法よ」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…なにか正しい触媒に出会えたその時」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…貴方を産んで見せるわ」

[メイン2] アルリウネ : 「………」

[メイン2] アルリウネ : ぎぎ、顔を曲げ。人形ではあるが。
人を真似て顔を作り出す。

[メイン2] アルリウネ : 笑み、のような物を顔に付けて。

[メイン2] アルリウネ : 「…もしそうなったのなら私は……嬉しい、と思えるようになるわ」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…うふふ…それは何より」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…そういえば、不思議ね」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「ここ、どうにも人が多いのだけど」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…何か催し物でもしてたのかしら」

[メイン2] アルリウネ : 「花たちの噂によれば……ええ」

[メイン2] アルリウネ : 「叡智、その魂を求める人たちが集まっているそうよ?」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…叡智」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…なら、ちょうどいいわね」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 卵を、優しく

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 黄金のゆりかごに託して

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…拝領しましょうか、その知恵」
杖を構えて、立ち上がる

[メイン2] アルリウネ : 「…ええ、そうすれば……」

[メイン2] アルリウネ : 「きっと、咲かないそのつぼみも開いてくれるでしょうから」
ふわり、と花が舞って

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…うふふ」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「ええ、では行きましょう…お人形さん」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「それが、必要なのでしょうから」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 杖で地面をたたけば、雰囲気が塗り替わる

[メイン2] アルリウネ : こくり、首だけを動かして。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : そこにいるのは、心を壊した者でなく

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 嘗て、戦場にて万術極めた魔法使い

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 故に、知っている

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 奪って、得るものなのだと

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…久方ぶりね、諍いは」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : そう呟いて、歩き始めて

[メイン2] アルリウネ : 「あら…心配しなくても大丈夫よ、みんな、土に還るから」

[メイン2] アルリウネ : ぴたり、人の影を追う人形一つ。

[メイン2] アルリウネ : そうして、その場に残ったのは。
色濃く残った花の香りと、満月の灯りだけ。

[メイン2] アルリウネ : 月に叢雲、花に風となるか。

[メイン2] アルリウネ : 月を生まれ直し、花を咲かすかはわからない、が。

[メイン2] アルリウネ : エゴは貫くために、二人は、歩むのだった。

[メイン2] アルリウネ :  

[メイン2] アルリウネ :  

[メイン2] アルリウネ :  

[メイン2] クロコダイン :  

[メイン2] クロコダイン :  

[メイン2] クロコダイン : ゼシルウェンシーとの戦いを一旦終えると、獣王と称される男は再び、道もなくたださ迷う。

[メイン2] クロコダイン : ただ一つの目的を掲げ、それを追い求めて、宛もなく歩き続ける。

[メイン2] クロコダイン : 「………ここは」

[メイン2] クロコダイン : 獣の感覚を研ぎ澄ませ、何か異質な雰囲気を感じとる。

[メイン2] クロコダイン : クロコダイン自身の持つ力、その性質とは全く違う、妖艶とも言うべき感覚を肌で受け止める。

[メイン2] クロコダイン : 「…………」

[メイン2] クロコダイン : 進むべきか、否。

[メイン2] クロコダイン : 迷う理由はない。

[メイン2] クロコダイン : (…行く以外に、オレの選択はないな)

[メイン2] クロコダイン : そのまま歩みを進める。

[メイン2] クロコダイン : しばらく進むと

[メイン2]   : 月の光が差し込む

[メイン2]   : 暗煙が、昏く辺りを包み

[メイン2]   : 帯のような月光が、ビルの隙間からそれを払う

[メイン2]   : その最中

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : まるで絹を纏うように、月光を帯びる

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 細身の女性が、鰐肌の騎士を見つめる

[メイン2] クロコダイン : (これは………)

[メイン2] アルリウネ : 月の光が指すことで。

[メイン2] アルリウネ : 照らされる、彼女の周りをふわりと舞う花びらが。

[メイン2] アルリウネ : そうしてそばに咲く、令嬢のような女性。

[メイン2] クロコダイン : 現実実を感じさせない、空気を纏った少女たちを思わず見る。
彼女たちを覆う状況、環境、その幻想的な雰囲気に吸い込まれるかのような感覚を肌で覚えるも、踏みとどまる。
確かな違和感を覚えた。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 杖を、地面に付けると

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 青白く、紋章がその地を包む

[メイン2] クロコダイン : 作られた光景とも言うべきか
周囲が彼女たちに合わせてるかのような雰囲気を直感的に感じ取った。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 魔力を昂らせる、陣地形成の魔術である

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : それを起点に

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 暗いベールは剥がれて、星空が広がる

[メイン2] アルリウネ : それと時を同じくするや

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : その光は星々であり、ゆかりの魔力の礫である

[メイン2] クロコダイン : 「………!!!」
彼女の動きを見て瞬時に身構える
自身の直感が捉えた違和感が、決して的外れ出はないことを本能的に感じとる。

[メイン2] アルリウネ : 花びらがひとつ、ふたつ、みっつ。
アルリウネの背に咲く。

[メイン2] クロコダイン : スゥ、と息を吸い。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「どうも、鱗の貴公」

[メイン2] アルリウネ : 「あなたは……人?少し違うような気がするけれど」

[メイン2] クロコダイン : 「オレの名はクロコダイン!!知っているかは分からんが獣王とも呼ばれた事がある男だ!!」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「成る程、王の類いですか」

[メイン2] クロコダイン : 幻想的な雰囲気に押し負けるか
そう言わんばかりに力強く叫び、名乗る。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「ならば名乗りましょう、これも礼儀です」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「私は満月の女"王"ゆかり、この地の叡智を拝領しに参りました」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : そう言うと同時に、彼女の背には遥かに満月が輝く

[メイン2] アルリウネ : 「あら、あら……王という物は知らないけれど、獣と言われたのなら、返しましょう」

[メイン2] アルリウネ : アルリウネは思考する。植物と対局に位置する存在に対して。

[メイン2] アルリウネ : 「私はアルリウネ、獣を花へと咲かせる人形」

[メイン2] アルリウネ : そういうと同時に、彼女の前には薄らと花が咲き。

[メイン2] クロコダイン : (二人……どちらとも余裕がある。単純に数で負けてるのもあるが、それだけではない。)

[メイン2] クロコダイン : (純粋な腕力においては二人がかりだろうとおオレが圧勝できるように思える、だが)

[メイン2] クロコダイン : (この二人は、どちらもオレがどういった存在なのか感じ取れないような馬鹿とは到底思えん)

[メイン2] クロコダイン : (分かった上での余裕、恐らく単純な力押しでは勝てない相手と見た)

[メイン2] クロコダイン : (下手をすればそれだけではない、相性的にはどちらか片方だけでも怪しいかもしれん。だが)

[メイン2] クロコダイン : (だからと言って、ここでオレにできる事など何があるか)

[メイン2] クロコダイン : (ただ一つ、そうただ一つだ!!)

[メイン2] クロコダイン : 「……名前は覚えた」

[メイン2] クロコダイン : 「目的を同じとする以上やる事は一つだ……!!」

[メイン2] クロコダイン : 「行くぞ!!!!!」

[メイン2] クロコダイン : 大きく息を吸い込み

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「仕方なき事です」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 杖を回して、魔力を集める

[メイン2] アルリウネ : 「ええ、枯れ落ちる前に包み込みましょう」

[メイン2] クロコダイン : 周りの環境ごと凪ぎ払うかのように、業火を纏う炎を口から吐き出し、二人に放つ!!

[メイン2] アルリウネ : 集まった花から、リンと透き通った音が鳴り─────

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「おっと…まるで竜ですね」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 青白い魔力を、紫に染め直して

[メイン2] アルリウネ : 「っ………これ、は……炎…!」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「問題ありません」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 重力の魔法を形成し、それらを大地に這わせる

[メイン2] アルリウネ : ────アルリウネの力は、命を花へと還るもの。
つまりは、命ではない……ましてや奪う側の炎など、自らの力では耐えられず。

[メイン2] アルリウネ : 「……あら…」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 岩石の球体、それらを集めて壁を成し

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 炎を受け止める岩壁を築く

[メイン2] アルリウネ : 結果として、花はその岩の周りをただ舞うだけで終わった。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「所謂重力魔術です、この方が易いですからね」

[メイン2] クロコダイン : (そう来たか……!!)

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「そして…」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 再び青白い魔力を収束させて

[メイン2] クロコダイン : 予想通り、相性は確かに悪い、それを確信する。

[メイン2] アルリウネ : 「……あなたってば、命ない物でも動かせるのね…」
きっと人であれば、感嘆の意味が込められているであろう。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「壁越しに行きましょうか」

[メイン2] クロコダイン : しかし

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 魔力の砲弾を、大きく作り出し

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 山なりに投げ打つ

[メイン2] クロコダイン : それを承知の上で二人に向かい駆け出す。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…ほう、接近戦で来ますか」

[メイン2] アルリウネ : 「あら……?あなたも、枯れ落ちたいのね?」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 杖を構えつつ、そこに

[メイン2] クロコダイン : 砲弾を身体に受ける。
一つ一つに鈍い痛みを覚えつつも、勢いを緩めずに迫る。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 魔力を這わせて、刃を形成する

[メイン2] クロコダイン : 獣王と称される男は、ある一瞬の光景を見逃さなかった。

[メイン2] クロコダイン : さっきの火炎、それを受けた反応。

[メイン2] アルリウネ : それに対するように、周囲一帯を花の香りで敷き詰める。
頭が混乱するかもしれない、それほど沢山詰め込んで。

[メイン2] クロコダイン : 二人の反応に、明らかな差違を見出だした。

[メイン2] クロコダイン : そのまま手に持った斧をゆかりに投げつける。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…おや」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 魔力で作り出した大剣を、斧に叩きつける

[メイン2] クロコダイン : そして迫る途中、目の前にある、ゆかりの作った岩盤を拳で叩き砕く。

[メイン2] アルリウネ : 「わ、きゃっ……!」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「得物を投げるとは、成る程」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「ふむ」

[メイン2] クロコダイン : そしてその勢いよく散った破片を、全てゆかりの方向へと殴り飛ばした。

[メイン2] アルリウネ : ガキン、目の前で音が鳴り。
けれど眼窩のない虚ろはそれを見据え。

[メイン2] アルリウネ : 「ああ、いけないわね」

[メイン2] クロコダイン : 二人との間に障害物はない。
そして可能な限り隙は作った。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「全く、早いものです」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 杖を高速で回転させて、岩を弾き

[メイン2] クロコダイン : その隙に、ブレスに対して明らかに怯んだ者に狙いを付ける。

[メイン2] アルリウネ : 腕を伸ばし……そこから……多数の根を生やし、岩石を受け止めようと。

[メイン2] クロコダイン : アルリウネに迫り、巨椀を伸ばした。

[メイン2] アルリウネ : するが、それもまた隙。

[メイン2] アルリウネ : 「…な……っ?」

[メイン2] クロコダイン : 「掴んだ……!!!」

[メイン2] クロコダイン : 大きく息を吸い込み、そして拳を振りかざし。

[メイン2] アルリウネ : ガッ、と自らの腕は全て伸び切っている。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「成る程、そちらを見出しましたか」

[メイン2] アルリウネ : 「……」
それに還すように、ひとつ、花びらが背中に……

[メイン2] クロコダイン : アルリウネに、もう片方の巨椀を放つ。

[メイン2] アルリウネ : 「────っ、ぐ」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「ならばこうしましょう!」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 杖を地面に叩きつけて

[メイン2] クロコダイン : 手応えあり、そのまま追撃に向かう。

[メイン2] アルリウネ : 植物は脆く、その一撃で体が崩れ…
背中に咲く花も、ソレに崩れ落ち。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 大きく、重力波を放つ

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : それは、ゆかりに強く引き寄せる力場である

[メイン2] クロコダイン : 拳を当てたアルリウネに向けて、もう一度ヒートブレスを放つ

[メイン2] クロコダイン : 「………!?」

[メイン2] アルリウネ : 「………」

[メイン2] クロコダイン : 急な引力に不意を突かれ、ブレスの威力が弱まる。

[メイン2] アルリウネ : アルリウネは崩れた事を覚え、とてもとても鋭いものだと認識した。
故に、だからこそ。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「火よりはマシだと思ってくださいね」
そして、引き寄せたまま

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 二人を射程圏内に収めて、さらに

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 氷の嵐を巻き起こす

[メイン2] アルリウネ : その不意を突いたように、アルリウネの姿が……”消える”。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「ザミュエルの嵐よ!」
空気を凍てつかせる、魔力の渦が発生する

[メイン2] アルリウネ : 先ほど撒いておいたその花の匂い、認識を誤認させるその妖香。

[メイン2] クロコダイン : (紫色の女、こいつは手札が多い……!!長期戦になれば間違いなく押し負ける!!)

[メイン2] アルリウネ : 「ええ、ええ……冬は嫌いではないわ、枯れ落ちるから」
そのまま、雪の嵐へと身を投げつつ。

[メイン2] クロコダイン : (そしてここ桃色髪の女……何がどうなって……!?)

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「ならば良かった、では」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「貫きますよ」

[メイン2] クロコダイン : 「グウっ……!!」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 杖の穂先に、魔力の奔流を作り出す

[メイン2] クロコダイン : (好機を逃した………!!!)

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : それは、魔術にしては珍しい工業的意図である

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : その名を『岩盤砕き』

[メイン2] アルリウネ : アルリウネは、危険だと感じた。
炎を司る存在であれば、自らを枯らすよりも、灰にしてしまえるから。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 時に、はるかに巨大な獲物の甲殻を打ち砕く為の技である

[メイン2] クロコダイン : (まずい………!!!)

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「あまり使わないんですけどね」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : そのまま、目の前の竜種の騎士にそれを突き立てようとする

[メイン2] クロコダイン : (これを押し返すには……獣王痛恨撃……いや間に合わん……!!!)

[メイン2] クロコダイン : (避けるなど持っての他だ!!)

[メイン2] クロコダイン : 悟ると、全神経を集中し

[メイン2] クロコダイン : 放たれようとしている攻撃に向け構え、身構える。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「潔し」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : そのまま突き立てて、瞬間

[メイン2] クロコダイン : (耐え抜けるか…?いや耐えぬいても次があるかはわからん……!!)

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 蒼緑の閃光が至近距離で激しく爆ぜた

[メイン2] クロコダイン : (だがここで耐え抜かねば次はない……!!)

[メイン2] クロコダイン : 「ぐっ………」

[メイン2] クロコダイン : 「ぐわあああああああああああああ」

[メイン2] アルリウネ : 自らよりもとても大きなその存在を、目にし。
目を見開きつつも、それを受ける獣にもまた、枯れ落ちないことに驚いていた。
人形だと、言うにも拘らず。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…硬い!」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 杖を引き抜き、距離を空けつつ

[メイン2] クロコダイン : 「ぐっ、ぐぉぉ………」
膝をつく。

[メイン2] アルリウネ : 「……あら、これでも……果てていないのね?」
口を押えて、彼の方を見。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「ならば何度も打ち崩すしか無いですがね」

[メイン2] クロコダイン : (防御に集中したのは正解だった。お陰でまだなんとか戦える。だが……)

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : そう言い、杖を軸に

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 自身より巨大な弓矢を作り出し引き絞る

[メイン2] クロコダイン : (オレの傷は決して浅くない。そしてあいつらにはまだ余力がある……!!)

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : ローレッタの技、魔力の絶矢である

[メイン2] クロコダイン : (逃げる事も叶わん……!!このままでは……)

[メイン2] クロコダイン : (だがここでオレにできる事など、最初から一つにしかないわッッ!!!!)

[メイン2] アルリウネ : 「あら、私にも手伝わせてくれる?」
けれど、奥底に芽生えたソレを見ないように。

[メイン2] クロコダイン : 「ハァ…ハァ……ッ」

[メイン2] アルリウネ : 地中から根を生やし、弓を引き絞る力を、強く、強く。

[メイン2] クロコダイン : 両拳に、力を込めて。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…おや、珍しい」
協力というのもそう無き故に

[メイン2] クロコダイン : (防御をある程度捨てねばならん…失敗すれば間違いなくオレは死ぬ。だが)

[メイン2] クロコダイン : (これ以外に切り抜ける方法など、オレの頭では考え付かん……!!)

[メイン2] アルリウネ : 「きっと、人というのはそうするものでしょう?」
何度も見てきた、光景を浮かべつつ

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 矢の先端、彗星の如き魔力の一射を

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…それはきっと素敵ですね」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : クロコダインに撃ち放つ

[メイン2] クロコダイン : 立ち上がり、両腕に力を込めたまま、構えて

[メイン2] クロコダイン : 「来い………!!!」

[メイン2] アルリウネ : 強く、引き─────放つ。

[メイン2] アルリウネ : アルリウネは思考する、これだけの力……喰らうことさえあれ、打ち砕かれる事など到底ないだろうと。

[メイン2] クロコダイン : 「ぐっ、うおぉぉっ」

[メイン2] クロコダイン : 二人の放った攻撃を、全身に受けて。

[メイン2] クロコダイン : 「ぐおおおあああああああぁぁぁ」

[メイン2] クロコダイン : 「ぐ…があっ…………」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…果てたか?」

[メイン2] クロコダイン : さっきよりも更に強力な攻撃を、防御の薄くした全身で受ける。

[メイン2] クロコダイン : それにもたらされたダメージは計り知れない物がある。
果てるのが普通であろう。だが

[メイン2] アルリウネ : 「……おかしいわね?まだ、枯れ落ちてないみたい、だけれど」

[メイン2] クロコダイン : 「……………っ!!」

[メイン2] クロコダイン : 膝をつくことすらなく受け止め切って、構える。

[メイン2] クロコダイン : そしてボロボロの自分の身体を鼓舞するように叫び

[メイン2] クロコダイン : 「行くぞおおおぉ!!!!」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…ッ!」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「規格外ですね、まるで半神の域ですよ」

[メイン2] クロコダイン : 闘気を溜めきった両拳の力を、衝撃波として二人に放つ。

[メイン2] アルリウネ : 奥底にある、その”何か”。
芽生えた、言葉で言い表せない物がつぼみが咲き……

[メイン2] クロコダイン : 「獣王!!!!!!!」

[メイン2] アルリウネ : 「ええ、ええ……こんな人も、人型見たことない…わ」

[メイン2] クロコダイン : 「痛恨撃ィィィィィ!!!!」

[メイン2] アルリウネ : 「────」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「下がって」

[メイン2] アルリウネ : 「な」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : そう言い、前に立つが

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : まあ、いくら女王といえど

[メイン2] アルリウネ : アルリウネは、思考する……前に。
目の前に立つ彼女に思考は止まる。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : さして受身の練度は無い、強いて言えば

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 防ぐ魔法があるのみ、故に

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「『魔力の盾』よ」
唱えるのだ、一心に

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : それが学んできた術なのだから

[メイン2] アルリウネ : 思考、よりも。
生存本能、あるいはアルリウネが体験したことのないものか。

[メイン2] アルリウネ : 体が動く。
覆うように、ツタが蔓延って。守らんとする。

[メイン2] アルリウネ : けれど、獣の一噛みでちぎれてしまいそうな……

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : …されど、儚き光の壁

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 無くした片腕も相まって、その細身は

[メイン2] アルリウネ : ぶつかり、空気が揺れて。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 軋み、弾けかけるが

[メイン2] アルリウネ : 根もつたも、全てちぎれて消し飛んで。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 魔力の結合が、背後の一人を守らんと砕けるのを防ぐ

[メイン2] アルリウネ : けれど、前に立つ者とその盾が。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…ぐッうう…!」

[メイン2] アルリウネ : 辛うじて届いたのは、空気の破裂する音。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 血が滲み、魔力の錬成が薄れかけるが

[メイン2] アルリウネ : そして、彼女の悲鳴。

[メイン2] アルリウネ : 「……な、っ……」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 気が遠くなる修練がそれを繋ぎ止める

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 彼女は女王である、故に

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 細枝であれど嵐に立ち向かう精神を、魔法に変えるのだ

[メイン2] アルリウネ : 「あなたは……ここで朽ちてしまいますか……?」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「……いや」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「……それは惜しいし、何より」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「約束に反します故」

[メイン2] アルリウネ : その言葉は、目的が合うモノ同士への言葉か。
それとも、心配、というものなのか。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「故に、どうか見届けくださいな」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…女王という者の魔法を」

[メイン2] アルリウネ : アルリウネは困惑する
けれど、自らの尺度は使い物にならず。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 杖を突き立てて、魔力の組み立てを変える

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : それは幾度となく愛したあの光

[メイン2] アルリウネ : 「……見届けさせて、くださいな」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 月を模す円形、そして朧

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 故にその魔術は、満月である

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : ゆかりの体が浮かび上がり

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : くるり、円を描くように空を泳げば

[メイン2] クロコダイン : 「ぐっ………!!」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : そこに魔力で形成された"満月"が生まれて

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : ゆっくりと、前方に打ち出される

[メイン2] クロコダイン : 止めるだけの余力などもうない
ただその光景を見つめる

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「…私の満月が最優と褒め称えられた意味を教えましょう」

[メイン2] アルリウネ : 「これが……女王の魔法というもの……」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「それはありとあらゆる魔法を弾き、それは立ち向かう者の魔力への耐性を砕き」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「そして、それは遥かに激しく爆ぜるのですよ」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 盾のように、降りかかる衝撃波を月が弾いて

[メイン2] アルリウネ : そう、決して朽ちてしまわないような。
それはそれは輝く満月一つ。そんな、私が目指す物とは対極に位置するものが。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : それはゆったりとクロコダインに突き進む

[メイン2] アルリウネ : ”綺麗”に感じてしまうのだ。

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : 「思い知ると良いでしょう、満月の女王を…そして」

[メイン2] 満月の女王 ゆかり : クロコダインを捉え直して、杖を向ける

[メイン2] クロコダイン : 「ぐおお………」

[メイン2] 気高き夜 ユカリ : 「気高き夜と呼ばれた者の月を」
嘗て、戦争の中で滅びを振り撒き神に見惚れられた魔術師の瞳で

[メイン2] 気高き夜 ユカリ : 「…『ほうき星』」
月を打ち込んだまま、さらに絶え間なく

[メイン2] 気高き夜 ユカリ : 流星の如き魔力の弾丸を撃ち続ける

[メイン2] クロコダイン : (あの場に置いてオレの選択は最善だった。やれる事は全てやりきった。そう心から確信している)

[メイン2] クロコダイン : (その上で、このザマか)

[メイン2] クロコダイン : (知ってはいたが、獣王などと言う名を持っても、やれる事などたかが知れている。とどかぬ領域だってある)

[メイン2] クロコダイン : (それでもオレは………)

[メイン2] クロコダイン : (オレは)

[メイン2] クロコダイン : (………ひとまずそうだな)

[メイン2] クロコダイン : (敗北だ)

[メイン2] クロコダイン : 「ぐっ、ぐおおぁあ……」

[メイン2] クロコダイン : 「ぐわああああああああああああ」

[メイン2] クロコダイン : 絶え間無い連撃に、その痛みを身体に染み渡る度に、呼応するように悲鳴が轟いていく。

[メイン2] 気高き夜 ユカリ : 「……まったく」

[メイン2] 気高き夜 ユカリ : 「酷く丈夫ですね、貴公」

[メイン2] クロコダイン : 「これ…ぐらいしか……」
絶えそうな息遣いで

[メイン2] クロコダイン : 「取り柄がないので……な…………」

[メイン2] アルリウネ : 「……」
目を見張き、その獣王たる証拠を瞳へと。

[メイン2] アルリウネ : 「どうして…朽ちようとしないのかしら…?」

[メイン2] アルリウネ : 「終わってしまえば、あなたが感じてるであろう痛みとやらも全て、消えてしまうのよ?」

[メイン2] クロコダイン : 「これしか、オレにはないからだ」

[メイン2] クロコダイン : 「たとえ、及びが付かなかろうと、オレがオレでいるために、オレが自身の証明となりうる物は」

[メイン2] クロコダイン : 「これしかないと、そう思えてならないからだ」

[メイン2] クロコダイン : 「だから、誇りを掲げた。追い求めた」

[メイン2] クロコダイン : 「……………そんな、ところだろうな。恐らくは」

[メイン2] アルリウネ : 「……」

[メイン2] 気高き夜 ユカリ : 「…ならば」

[メイン2] 気高き夜 ユカリ : 「どうせ殺すのも意味のない事ですね」

[メイン2] 気高き夜 ユカリ : …魔力の本流を、止めて

[メイン2] アルリウネ : アルリウネは、困惑した。
命は帰すだけで、あり方にこだわるものなど見たことが無かったから。

[メイン2] アルリウネ : その様子を、虚ろな眼窩で見つめ。

[メイン2] 気高き夜 ユカリ : 「…誇りに生きる者というのは、死して尚穢れぬ物」

[メイン2] 気高き夜 ユカリ : 「なら、この敗北を胸に抱えていると良いでしょう」

[メイン2] クロコダイン : 「ふっ……そうか……」

[メイン2] クロコダイン : 「とどめを……ささぬか…………」

[メイン2] クロコダイン : 「ああ……完敗だ」

[メイン2] 気高き夜 ユカリ : 「…復讐だのなんだの言って前に立つ時は」

[メイン2] 気高き夜 ユカリ : 「殺してあげますよ」

[メイン2] 気高き夜 ユカリ : そう言って、そのまま

[メイン2] アルリウネ : 「……けれど、ええ……やっぱり獣なのね、あなたは」

[メイン2] アルリウネ : 「花は、枯れるだけだもの」

[メイン2] 気高き夜 ユカリ : 歩き出して、去っていく

[メイン2] アルリウネ : 言葉と共に、花びらが舞って

[メイン2] アルリウネ : 一瞬、姿が掻き消える。

[メイン2] クロコダイン :  

[メイン2] クロコダイン :  

[メイン2] クロコダイン :  

[メイン2] クロコダイン :  

[メイン2] クロコダイン : 激闘を終え、行く宛のない男が一人、隠しきれない巨体を物陰に潜めて休息を取っている。

[メイン2] クロコダイン : 放心にも近い感情を、時々疼く痛みで覚ましながら、どこか遠くを見るように空を見つめる。

[メイン2] クロコダイン : 「…………」

[メイン2] クロコダイン : 「……何をしたかったのだろうな、オレは」

[メイン2] クロコダイン : 返す者、返せる者のいない問答を、一人呟く。

[メイン2] 窓付き : 「─────誰かいるの?」

[メイン2] 窓付き : 廃墟の中、少女の声が響く。

[メイン2] クロコダイン : 「……人か」

[メイン2] 窓付き : 現れるは、これといって特徴のない
糸目とおさげの、普通の少女。

[メイン2] クロコダイン : 気配に対して、普段よりも気づくの随分と遅れた。
傷だらけで感覚が鈍っていたからなのか、それとも、

[メイン2] 窓付き : ただ、歴戦の戦士、クロコダインであれば気がつくかもしれない。
こんな廃墟に、たった1人で舞い込む者など、この辺りに住む者達がする行為ではない。

[メイン2] 窓付き : 「……!!……怪我……してるの……?」

[メイン2] 窓付き : その少女は、クロコダインの方へ、ゆっくりと歩み寄る。

[メイン2] クロコダイン : 「まあ……そんなところだな」

[メイン2] 窓付き : 少女は………感じた。

[メイン2] 窓付き : 「……すごく、痛そう、だね…… ……喧嘩、とか……?」
話題に出すものが思い当たらず、ズレた問いを投げかける。

[メイン2] 窓付き : 窓付きもまた、気がついていた。
この大男は─────。

[メイン2] 窓付き : ─────"叡智"を求める戦いの中、傷つき、そうしてここに草臥れた。

[メイン2] クロコダイン : 「喧嘩か…まあ、以前ならそんな風に言われたら怒りを見せてたかもしれないが……」

[メイン2] 窓付き : ……当初の窓付きであれば、こんな無防備を晒す男がいれば
叡智を望む『敵対者』がいれば、直ぐにでも包丁を突き立てていた。
……だが、しない。

[メイン2] 窓付き : できない。

[メイン2] 窓付き : 「あ……え、えっと……変なこと、言っちゃった」

[メイン2] 窓付き : 「……ごめんなさい」

[メイン2] クロコダイン : 「今となっては、そう的外れな見方とは思わん。そんなものかもしれんな」

[メイン2] 窓付き : 窓付きは、壁に凭れる大男の姿にどこか─────"強い人の心"を、感じざるを得なかった。

[メイン2] 窓付き : そしてそれは……窓付きの知りたいものでもあり─────。

[メイン2] 窓付き : 「………?……そう、なの……?」

[メイン2] 窓付き : 少女は、この大男に、初対面ながらも興味を抱いていた。

[メイン2] 窓付き : そして、クロコダインの傍に寄り、膝を着く窓付き。

[メイン2] 窓付き : 「……えっと、こう、かな……」
そう言うと、窓付きの周囲に、"4つの道具"が宙に浮かぶように現われ。

[メイン2] 窓付き : その内の一つである"聖杯"を、クロコダインの傷へと掛け……。

[メイン2] 窓付き : すると、みるみる内に、その傷口が塞がっていく。

[メイン2] クロコダイン : 「これは……」
窓付きのしている事を見て不思議そうに

[メイン2] 窓付き : …………自分でも、どうしてこうしているのか、分からない……。
分からないけど、でも……。

[メイン2] 窓付き : "こうしたかった"。

[メイン2] クロコダイン : (呪文の類いか……いやどこか違うな………)

[メイン2] 窓付き : 「……あ、えっと……変なことをしてるわけじゃなくて」

[メイン2] クロコダイン : 「ああ、わかっている」

[メイン2] 窓付き : 「ちゃんとした治療なので…… ……初対面だから、信じてもらえないかも、だけど……」

[メイン2] 窓付き : 「………!」

[メイン2] クロコダイン : 「自由に動けんものだから時間に任せて治そうと思ってた所でな、礼を言う」

[メイン2] 窓付き : ……そう、初対面なのに……この人は……。
私の、今考えていること、思っていること、感じていること
多分……全部、分かっている。

[メイン2] 窓付き : ……どうして……。
知りたい……分からない。

[メイン2] 窓付き : 「……どう……致しまして」
何故だか、胸の辺りが熱くなる。
顔も赤くなる。

[メイン2] 窓付き : 「…………」

[メイン2] 窓付き : 「……あの、失礼なこと、また言っちゃうかもだけど……」

[メイン2] クロコダイン : 「……なんだ?」

[メイン2] 窓付き : 気になるから、"人の心"を。

[メイン2] 窓付き : ……不安な気持ちで、一杯だけど……でも、踏み越えなくちゃいけないから。

[メイン2] 窓付き : そうじゃないと……甘粕おじさんや、キャロルのようには、なれないから。

[メイン2] 窓付き : 「どうして─────"叡智"を求めるこの戦いに?」

[メイン2] 窓付き : クロコダインの目を、じっと見る。

[メイン2] 窓付き : 突拍子も無い問い。

[メイン2] クロコダイン : 「…………叡知か」

[メイン2] 窓付き : こくりと、頷く。

[メイン2] クロコダイン : 「そうだな、」

[メイン2] クロコダイン : 「言ってしまえば────」

[メイン2] クロコダイン : 「───オレは最初からそんなものは求めていない」

[メイン2] 窓付き : 人の心を知るためには……この戦いに挑む者達の、信念が見たい。
道具を手にするよりも……彼らの内情を、知る。
それが今、自分にとって一番必要なものかもしれないと、学んだから。

[メイン2] 窓付き : 「……え?」

[メイン2] 窓付き : きょとん、とした表情に。

[メイン2] 窓付き : 「それじゃあ……どうして……?だって、こんなにも傷ついて……」

[メイン2] 窓付き : 「そう……利益とかが無い!」

[メイン2] 窓付き : 「意味がない!」

[メイン2] クロコダイン : 「あるさ、少なくとも、さっきまでのオレにとってはな」

[メイン2] 窓付き : 「………!!」

[メイン2] 窓付き : ……分からない。だからこそ……そこに、私の知りたいものが
あるのかもしれないから─────。

[メイン2] 窓付き : 「……聞かせて、ください」

[メイン2] 窓付き : 真剣な眼差しで、今にも崩れそうな表情を綻ばせながら。
クロコダインを、じっと見つめる。

[メイン2] 窓付き : 不安で仕方ないから。窓付きはとにかく、必死だった。

[メイン2] クロコダイン : 「簡単な話だ」

[メイン2] クロコダイン : 「オレは"強さ"でしか自分を示す方法を知らない」

[メイン2] クロコダイン : 「しかしだ、それでもオレより強い奴などこの世界にはいくらでもいる」

[メイン2] クロコダイン : 「だから求めた。力を」

[メイン2] 窓付き : 「……"強さ"で……」

[メイン2] クロコダイン : 「力を高める機会を。糧とすべく強敵との戦いを」

[メイン2] クロコダイン : 「それが実現しうる今、この舞台を」

[メイン2] 窓付き : ……この人と、私は、違う。
でも─────どこか、同じような……?

[メイン2] 窓付き : 私もそう。
私はみんなと仲良くなりたい、そう思って、普通に暮らしてきたつもりだった。

[メイン2] 窓付き : だから、私を普通に暮らさせない因子があるなら、"邪魔"だから、どかしてきた
─────そうして、孤立してしまった。

[メイン2] 窓付き : "強さ"を求めると……私の、この考えは……。
……似てる……?………ううん、でも、違うよ。
だってこの人には─────。

[メイン2] 窓付き : ─────"心"がある。

[メイン2] クロコダイン : 「だが今となっては、お前の言う通り無意味かもしれんな」

[メイン2] 窓付き : 「……………」

[メイン2] クロコダイン : 「今、オレには戦いを追い求める意思が湧かん」

[メイン2] 窓付き : 「………戦う理由が、見つからない……そういうこと、ですか……?」

[メイン2] クロコダイン : 「そうかもしれんな…………いや」

[メイン2] クロコダイン : 「そうだろうな。恐らくは」

[メイン2] 窓付き : 「………私は……私は………」

[メイン2] 窓付き : 拳を、ぎゅっと握る。

[メイン2] 窓付き : ……何故だか分からない、でも。
この人を、このまま見捨てるという選択肢は……自分の中には、無かった。

[メイン2] 窓付き : 助けてあげたい、だなんて上から目線に見えるかもしれない。
実際、そうでしょって私の中にいる、もう1人の私がそう言ってる。

[メイン2] クロコダイン : その行動に少しだけ驚くも、表情には出さないまま。

[メイン2] クロコダイン : 「……どうした?」

[メイン2] 窓付き : でも─────。
………"そうしたい"。

[メイン2] 窓付き : 「……!!……い、いえ……ちょっと、考え事を……」

[メイン2] 窓付き : 「……では……今度は、私から話をしても、いいですか……?」

[メイン2] 窓付き : ……"助けてあげる"、だなんて……やっぱり私は、無理だから。
だから……だから……。

[メイン2] クロコダイン : 「ああ、治してくれた礼もある。付き合うさ」

[メイン2] 窓付き : 少しでも……"同じ"ような人がいるってことを─────。

[メイン2] 窓付き : 「………ありがとうございます。」

[メイン2] 窓付き : 一礼し、目を閉じ。

[メイン2] 窓付き : 「………私も、あなたと似たような理由で、この戦いの中に、いるんです」

[メイン2] クロコダイン : 「……ほう」

[メイン2] 窓付き : 「私はずっと……一人でした」

[メイン2] 窓付き : 「みんなと仲良くしたかったのに………でも……」

[メイン2] 窓付き : 「駄目でした……」

[メイン2] 窓付き : 思い起こされる、イジメの日々。

[メイン2] クロコダイン : まっすぐ見つめて、話を聞く。

[メイン2] 窓付き : 分からないけど、私の言葉で傷ついてしまった人がいるみたい。
分からないけど、私の行動で悲しんでしまった人がいるみたい。

[メイン2] 窓付き : だから─────社会から、孤立してしまった。

[メイン2] 窓付き : 言ってしまえば私は─────共感性が、無いんだと思う。

[メイン2] 窓付き : 「……それで、自室にこもって、私って一体なんだろうって思って」

[メイン2] 窓付き : 「ずっとずっと考えて、それで辿り着いた結論が─────」

[メイン2] クロコダイン : 「………ふむ」

[メイン2] 窓付き : 「……私は、みんなとは絶対に馴染めない人間なんだっていう……」

[メイン2] 窓付き : 悲し気に、声を落としながら。

[メイン2] 窓付き : その目には─────少し、涙も浮かんでおり。

[メイン2] 窓付き : 「だから……諦めて、死のうとした……」

[メイン2] 窓付き : 「そうしたら、気が付いたらここにいて……それで、これです」

[メイン2] クロコダイン : 「そうか……」

[メイン2] 窓付き : そう言い、★しょうたいじょう★を見せる。
そこに書いてあるは─────"叡智の道具"に纏わる文章。

[メイン2] クロコダイン : 「………なるほどな」

[メイン2] 窓付き : 「……これを見つけることができれば、私は……変わることができるんだって、思ったんです」

[メイン2] 窓付き : 「でも─────違った……」
甘粕の言葉が脳裏に。

[メイン2] 窓付き : 首を横に振りながら。

[メイン2] 窓付き : 「………人を傷つけた先で手に入れた、"叡智"を使って、私は本当にみんなと仲良くできるのか分からなくて……」

[メイン2] 窓付き : 「だから─────私も……戦い続ける理由が……もう」

[メイン2] 窓付き : 顔を、沈める。

[メイン2] クロコダイン : 「確かに……似たような理由だな」

[メイン2] クロコダイン : 「だが一つだけ違いは感じる」

[メイン2] 窓付き : 「………え」

[メイン2] 窓付き : 顔を上げ、クロコダインの方を向く。

[メイン2] クロコダイン : 「自分を変えたくて、ここに来たのだろうお前は」

[メイン2] 窓付き : 「………!! ……はい……!」

[メイン2] クロコダイン : 「それで今、ここに至るまでに様々な物を見て、考えて最初思い描いてた理想に疑念を抱いた。そんな所か」

[メイン2] クロコダイン : 「つまりはここに来て、お前は既に変わったのだろう」

[メイン2] 窓付き : 強く、頷き、そして目を見開く。

[メイン2] 窓付き : 「……え……私は……もう……変われ、た……?」

[メイン2] クロコダイン : 「……一つ聞こう」

[メイン2] 窓付き : 分からない……分からない、分からない、分からない。

[メイン2] 窓付き : 「……なんで、しょうか……」

[メイン2] クロコダイン : 「お前は最初その話を聞いた時、何をしてでも"叡知"を手にしたい、あるいはそれに近い考えや思惑を抱いたか?」

[メイン2] 窓付き : その問いに、無言のままこくりと頷く。

[メイン2] 窓付き : 「…………それが……理想の私になれる、近道だと、思ったから」

[メイン2] 窓付き : 「"邪魔"になる人がいても……どかせばいいって、思って……」

[メイン2] クロコダイン : 「ならそれが答えだ」

[メイン2] クロコダイン : 「そんな考えを抱いた人間が、今この場で」

[メイン2] クロコダイン : 「得体の知れない化け物を助けようなどとするか?」

[メイン2] 窓付き : 「っ………!!」

[メイン2] 窓付き : 「それ……は…………」

[メイン2] 窓付き : ………分からない。

[メイン2] 窓付き : 分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない。

[メイン2] 窓付き : 分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない。

[メイン2] 窓付き : 「─────分からないよ……!!!!」

[メイン2] 窓付き : 頭を抱え、叫ぶ。

[メイン2] 窓付き : 廃墟に窓付きの声が木霊する。

[メイン2] クロコダイン : 「……そうか」

[メイン2] クロコダイン : 「まあいい、あくまでお前の話を聞いて俺が思った事にすぎん」

[メイン2] クロコダイン : 「気を悪くさせたようだな。すまない」

[メイン2] 窓付き : 「っ…………」

[メイン2] 窓付き : 瞳に涙を浮かべながらも、クロコダインをじっと見て。

[メイン2] 窓付き : 「………あの……!!」

[メイン2] 窓付き : クロコダインの方へ、一歩前へ。

[メイン2] 窓付き : 「……どうしてそう思ったのか……私は……知りたい……!!」

[メイン2] クロコダイン : 「……ほう」

[メイン2] 窓付き : 「あなたは私と同じようで、やっぱり違う……私よりも、ずっとあなたは……」

[メイン2] 窓付き : 「"優しい"……!!」

[メイン2] 窓付き : 「だから……だからこそ……えっと、えっと、だから……!!」

[メイン2] クロコダイン : 「"優しい"………?」

[メイン2] 窓付き : 歯切れの悪い言葉で、何とか次の言葉を紡いでいく。

[メイン2] クロコダイン : 「ふっ……ふははっ」

[メイン2] 窓付き : 「だって、そうじゃないですか……!!私なんかのこと……を…… ……?」

[メイン2] 窓付き : 「……な、なんで、笑ってるんですか……!!」

[メイン2] 窓付き : 「真剣なんだよこっちは……!?」

[メイン2] クロコダイン : 「すまんな。生憎優しさとは無縁の人生を送ってきたと自分では思ってたものでな」

[メイン2] クロコダイン : 「不意を突かれた気分だよ」

[メイン2] 窓付き : 「………それでも、あなたは……優しく、見えます」

[メイン2] 窓付き : 「………だから、だから、えっと、だから……」

[メイン2] クロコダイン : 「ああ」

[メイン2] 窓付き : 「傷!……治した、じゃないですか、だから……」

[メイン2] 窓付き : 「取引!」

[メイン2] クロコダイン : 「………いいだろう」

[メイン2] 窓付き : 「……!!」

[メイン2] 窓付き : ぱぁっ、と表情が明るくなり。

[メイン2] クロコダイン : 「どうせやることもない。借りを返すくらいの事には付き合うさ」

[メイン2] 窓付き : 大きく頭を下げ。

[メイン2] 窓付き : 「ありがとうございます!!」

[メイン2] 窓付き : 「─────私は、窓付きって、言います」

[メイン2] 窓付き : すぅ、と息を吸い、そして吐き。

[メイン2] 窓付き : 「……私に─────"心"を」

[メイン2] 窓付き : 「─────そして、"誇り"とは何かを……」

[メイン2] 窓付き : 「教えてください!」

[メイン2] クロコダイン : 「誇りか………」

[メイン2] 窓付き : 座り込むクロコダインの方へ、手を差し伸べる。

[メイン2] クロコダイン : 「教える事などオレには何もないが……そうだな」
「それらしいものを探す手伝いくらいなら、借りの分だけ手伝ってやろう」

[メイン2] 窓付き : その言葉に窓付きは、無意識に─────笑顔と、なっていた。

[メイン2] 窓付き :
      ヒートブレス
まるで心に、"熱い炎"が灯されたように。

[メイン2] 窓付き : ここからはもう、"夢"じゃない─────。

[メイン2] 窓付き : 私は……知るんだ。もっと広い世界へ行って……!!

[メイン2] 窓付き :  

[メイン2] 窓付き :  

[メイン2] 窓付き : まるで─────"大冒険"だ。

[メイン2] 窓付き :  

[メイン2] 窓付き :  

[メイン2] 窓付き :  

[メイン2] 窓付き : クロコダインと、そして"勝利に貪欲な男"の戦いから離れるように
ガマゲロゲを連れて避難する窓付き。

[メイン2] 窓付き : 応急手当をしたとは言え、まだ、完治状態ではない。

[メイン2] 窓付き : 「……大丈夫、大丈夫……今度は……辛い目に、遭わせないから……!」

[メイン2] ガマゲロゲ : 「…… ……」
瞳に戻りゆく生気は
すぐ傍で そのきずぐすりを塗った「腕」を巡らして
ガマゲロゲの傷が塞がっていくのを見届けたのち
こちらの目をじっと見る「目玉」を捉えた

[メイン2] 窓付き : 「……!……まだ、元気じゃない……みたい、か、な……?」

[メイン2] 窓付き : どうしよう、どうしよう……と、オロオロしながら。

[メイン2] 窓付き : ……!!

[メイン2] 窓付き : この子……カエルみたいな見た目してるから……ひょっとしたら……!?

[メイン2] 窓付き : 何かを思いついたかのような表情と共に、自身の周囲に浮かぶ武種の一つを手に取る。
それは─────"杖"。

[メイン2] 窓付き : そしてそれはまた、その形を変えて─────。

[メイン2] 窓付き :  

[メイン2] 窓付き : ★かさ★

[メイン2] 窓付き :  

[メイン2] 窓付き : すると同時に……ぽつ、ぽつ、ぽつ……と、雨が降り始める。

[メイン2] 窓付き : 局所的な、『あまごい』だ。

[メイン2] ガマゲロゲ :  

[メイン2] ガマゲロゲ : ポケモンには とくせい がある
ガマゲロゲの とくせい は

[メイン2] ガマゲロゲ : 「どくしゅ」

だが───近年 そのとくせいが変更できる事が明らかになった

[メイン2] ガマゲロゲ : ゲーチスもそれに目をつけた事によって
本来のとくせいから 無理やり もう一つのとくせいへと
違法な薬物によって変えられていたのだ

[メイン2] ガマゲロゲ : だが その薬物の効果が出血によってか
あるいは『奇跡』によって抜け落ちたのか
ガマゲロゲの「とくせい」は

[メイン2] ガマゲロゲ : すばやさ が 2倍 になる 「すいすい」 へと戻っていた。

[メイン2] ガマゲロゲ : 傷口は気づけばあっという間に塞がっていく
「ちょすい」ほどではないが───ガマゲロゲはみずタイプのポケモンだ
この「あまごい」は確実に 100% 命をつなぎ止めた

[メイン2] ガマゲロゲ : そして その後

[メイン2] ガマゲロゲ : 「……ゲロゲロ」

[メイン2] ガマゲロゲ : 窓付きに向かって
拳を振り上げる事も わざ を繰り出す事もせず

[メイン2] ガマゲロゲ : そう鳴いた。

[メイン2] 窓付き : 「………!!!」

[メイン2] 窓付き : 瀕死どころか、一つの命が奪われんといった状況下で。
こうして、助かったことに、生きてくれたことに窓付き。

[メイン2] 窓付き : 頬に、水が伝っていた。

[メイン2] 窓付き : きっとこれは、『あまごい』のせい。

[メイン2] 窓付き : 窓付きは、『敵同士』であったはずの、『邪魔者』であったはずの
言葉の通じない彼を─────力強く、抱き締めていた。

[メイン2] 窓付き : 「良かった……!!本当に、良かったよ……!!!」

[メイン2] 窓付き : "夢"じゃないんだ。
私は、今まで誰かを傷つけてきた。でもこうして─────。

[メイン2] 窓付き : 誰かを、助けることができた。

[メイン2] ガマゲロゲ : 「ゲロ ゲロ」
力強く、抱きしめられ
ガマゲロゲがその気だるげでとろんとした目を再び浮かべると

[メイン2] ガマゲロゲ : 頭のコブを震わせて
窓付きを微弱に振動させる
───

[メイン2] ガマゲロゲ : ガマゲロゲ しんどうポケモン

コブが 起こす バイブレーションが マッサージに 良いと 大人気の ポケモンだ。

[メイン2] 窓付き : 「あ……… ……ふ、ふふ、ふふふ……何これ……あはは……!」

[メイン2] 窓付き : 窓付きという、糸目とおさげが特徴的な
無表情だった少女は。

[メイン2] 窓付き : その曇った窓が拭かれたように、『太陽』の日差しが差し込まれたように。

[メイン2] 窓付き : 満面の笑顔で、笑っていた。

[メイン2] 窓付き : もう─────窓付きという少女は。

[メイン2] 窓付き : 人の心を─────

─────おぼえた。

[メイン2] 窓付き :  

[メイン2] 窓付き :  

[メイン2] 窓付き :  

[メイン2]   : やがて なにかを もとめて

[メイン2]   : 小さな 手のひらを ひろげ

[メイン2]   : きみは すぐに みつけたね

[メイン2]   : きみじゃない だれかを

[メイン2]   :  

[メイン2]   :  

[メイン2]   :